「なんとなく歯茎に違和感がある」
「気が付いたら歯の色がグレーに変わってた」
上記のように、歯に異変を感じていませんか?
もしかすると、歯の神経が死んでいることが原因かもしれません。
歯の神経が死ぬと見た目の変化だけでなく、痛みや口臭などさまざまな症状が現れます。
また神経の死んだ歯を治療せずに放置すると、抜歯が必要になるケースもあります。
この記事ではムクノキ歯科の歯科衛生士である東山が、歯の神経が死ぬ原因や症状、放置するリスクについて詳しく解説します。
歯の見た目の改善を目的とした治療法についても紹介しているので、歯の変色や違和感でお悩みの方はぜひ参考にしてください。
歯の神経が「死ぬ」とはどういう状態か?
歯の中心部には「歯髄(しずい)」と呼ばれる組織があり、一般的に「神経」と呼ばれています。
歯髄には神経線維や血管が含まれており、歯に栄養を供給して痛みなどの感覚を脳に伝える重要な役割を担っています。
歯の神経が「死ぬ」とは、歯髄が何らかの原因で組織が死んでしまった状態です。
一度死んでしまった神経は元に戻ることがなく、適切な治療を行わなければ時間の経過とともにさまざまな問題を引き起こします。
ここからは歯の神経が死んでしまう原因について3つ解説します。
【原因①】虫歯の進行による神経の壊死
歯の神経を失う最も多い原因が、虫歯の進行です。
虫歯が進行してエナメル質・象牙質を突き破り歯髄に到達すると、細菌感染が起こります。
初期段階では激しい痛みを伴いますが、感染が進むと神経が完全に死んでしまい、痛みを感じなくなるでしょう。
しかし、痛みがなくなったからといって虫歯が治ったわけではありません。
神経が死んだ後も細菌は歯の根の先に向かって進行し続けるため、早急な治療が必要です。
【原因②】事故や打撲による歯の損傷
転倒や事故、スポーツでの衝撃などにより歯に強い力が加わると、外見上は問題がなくても歯髄内の血管が損傷することがあります。
歯への血流が止まると歯髄への栄養供給が断たれ、徐々に神経が死んでしまいます。
外傷による神経の死滅は、受傷直後には症状が現れず、数週間から数ヶ月後に歯が変色し始めて気づくケースが多いのが特徴です。
【原因③】歯列矯正や歯ぎしりによる負担
歯列矯正治療や歯ぎしりでは、歯に持続的な力が加わり、まれに神経が死んでしまうケースがあります。
これらの原因による神経の死滅は自覚症状が少ないため、定期的な検診で発見されることが多くあります。
神経の死んだ歯に現れる5つの症状
神経が死んだ歯には、5つの変化や痛みを伴う症状が現れます。
①歯の色に変化が現れグレーまたは黒っぽくなる
最も分かりやすい症状が歯の変色です。
神経が死ぬと歯への栄養供給が止まり、歯の内部で血液成分が分解されると、歯が灰色や黒っぽい色に変化します。
特に前歯の変色が目立ち、審美的な問題となるでしょう。
②膿が溜まり歯茎が腫れる
神経が死んだ歯では細菌感染が進行し、歯の根の先端に膿が溜まる場合があります。
「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」と呼び、膿が溜まると周囲の歯茎が腫れ、状態によっては痛みを伴います。
③歯茎の表面にできもの(フィステル)ができる
根の先端に溜まった膿の逃げ道として、歯茎の表面にニキビのような小さなできものができることがあります。
できものは「フィステル」と呼ばれ、体調の変化で膿が出たり引っ込んだりを繰り返します。
④噛んだ時の違和感や浮いたような感覚がある
根の先の炎症により、歯が浮いたような感覚や噛んだ時の違和感を覚えることがあります。
硬いものを噛むと特に不快感を感じる場合が多いです。
⑤臭いが気になる
歯の神経が死んで膿が溜まると、臭いが気になり始めます。
乳歯でも神経が死ぬ?子どもの場合の注意点
乳歯でも神経が死ぬことはあります。
特に転倒で歯をぶつけてしまうことが原因であるケースが多いです。
乳歯の神経が死んだ場合、永久歯の神経の有無と関連性はありません。
しかし永久歯の形成に影響を与える可能性があるため、たとえ生え変わる予定の歯であっても適切な治療を受けることが重要です。
子どもが転倒してぶつけたり、ぶつけたところに出血があったりした場合は、早めに歯医者を受診しましょう。
神経が死んだ歯を放置してはいけない5つの理由
神経が死んだ歯を放置してはいけない理由は、5つあります。
①自然治癒はせず歯の根に痛みが出る
神経が死んだ歯は、自然に治ることはありません。
放置すると細菌感染が歯の根の先まで進行し、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)という状態になります。
根尖性歯周炎になると、噛んだ時の痛みや自発的な痛みが生じ、日常生活に支障をきたします。
②歯の根の先に膿が溜まり抜歯のリスクが高まる
神経が死んでしまった歯を放置しておくと、抜歯が必要な状態になる可能性があります。
歯の感染が進行すると根の先に「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる膿の袋ができます。
嚢胞が大きくなると歯を支える骨を溶かし始め、抜歯が必要となるのです。
③水分量が減って歯が割れる
歯の神経が死ぬと歯への水分供給が止まるため、歯が脆くなります。
健康な歯と比べて割れやすくなるとされており、日常の咀嚼でも歯が欠けたり割れたりするリスクが高まります。
割れ方によっては、抜歯せざるを得ない状態になるケースもあるのです。
④副鼻腔炎に繋がる
神経が死んだ歯の根の先に大きな膿の袋ができると、副鼻腔炎(ふくびくうえん)に繋がる恐れがあります。
歯を原因とする「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)」は副鼻腔炎の一種で、全体の約5〜40%を占めています。
上の奥歯の感染が進行すると、上顎洞(副鼻腔の一部)まで影響が及ぶためです。
副鼻腔炎を引き起こすと、鼻づまりや頭痛などの症状が現れるでしょう。
参考:東京慈恵会医科大学附属第三病院「当院における歯性上顎洞炎の臨床的検討」
⑤全身疾患に繋がる
歯の神経が死んで根尖性歯周炎になると、全身疾患に繋がる要因の一つです。
根の先に溜まった膿からの細菌が血流に乗り、全身に影響を与えると言われています。
特に心疾患や糖尿病の悪化、妊娠中の場合は早産のリスクを高めるとが報告されています。
神経が死んだ歯の見た目に対する治療法
神経が死んで変色した歯の見た目を改善する治療法には、以下のような選択肢があります。
②ラミネートベニアで表側を覆う
③被せ物にして全面を覆う
歯の被せの前に行う根の治療については、以下で解説しているので、あわせて読んでみてください。
☞【院長監修】根っこの治療は何をやっている?根管治療の必要性と内容は?
①レジンで詰めて仕上げる
歯の神経が死んだ後、レジンで詰めて仕上げる方法があります。
歯牙(しが:歯茎より上の見えている部分)のほとんどが残っていたり、変色が軽度だったりした場合、コンポジットレジンという歯科材料で修復します。
1回の治療で完了し費用も比較的安価ですが、時間が経つと変色しやすく、強度も強いとは言えません。
②ラミネートベニアで表側を覆う
ラミネートベニアは、前歯の表面を薄く削り、セラミック製の薄いシェルを貼り付ける治療法です。
自然な仕上がりが期待できますが、歯を削る量が多い場合や噛み合わせによっては適用できないケースもあります。
またラミネートベニア強度も、被せ物より劣るとされています。
③被せ物にして全面を覆う
神経を失った歯に行われる、主流の治療です。
歯全体を被せ物で覆う方法で、最も確実に変色を隠すことができます。
保険適用の材料では金属の被せ物やプラスチック系の材料が使用されますが、見た目や耐久性に限界があります。
また、より審美面を重視するなら、「自費の被せ物」という選択肢も検討しましょう。
セラミックやジルコニアなどの高品質な材料を使用することで、天然歯と見分けがつかないほど自然で美しい仕上がりを実現できます。
自費の被せ物は保険適用の材料と比べて以下のようなメリットがあります。
- 汚れが付着しにくく口腔衛生を保ちやすい
- 天然歯に近い透明感と色調の再現が可能
- 変色や劣化がほとんどない
- 金属アレルギーの心配がない
- 耐久性が高い
特に前歯など人目につきやすい部位の治療は、自費の被せ物にすることで、「笑顔に自信を持てるようになった」という患者様も多くいらっしゃいます。
白い被せ物については、以下の記事でも詳しく解説しています。
☞銀歯を白くしたい方必見!保険適用と自費の違いを歯科衛生士が詳しく解説
まとめ:歯の色や臭いが気になるなら早めに歯医者へ相談しましょう
歯の神経が死ぬことで現れる症状や放置するリスクについて解説してきました。
一度神経が死んでしまった歯は自然治癒することはなく、放置すると抜歯が必要になるなど深刻な状態を招く恐れがあります。
歯の変色や違和感を感じた場合は、早めに歯科医院を受診することが大切です。
適切な治療を受けることで、神経の死んでしまった歯でも長持ちさせられるでしょう。
特に見た目が気になる前歯の場合は、自費診療での被せ物治療も検討してみてください。
初期投資は必要ですが、長期的に見ると美しい笑顔を維持できる価値のある選択肢と言えます。
また歯の神経が死ぬような事態を防ぐためには、定期的な歯科検診が効果的です。
虫歯の早期発見により、神経を温存できる可能性が高まります。
外傷による神経の死滅も、早期受診で適切な対処が可能です。
定期検診の頻度には個人差がありますが、3ヶ月~6ヶ月に1回を習慣化し、お口の健康を維持していきましょう。
何か気になる症状があれば、次の検診を待たずに早めに相談するようにしてください。
ムクノキ歯科では、公式LINEやメールでのお問い合わせを24時間受け付けております。