「鏡で見たら歯茎に白いできものが。これって何?」
「歯茎に白いできものを見つけたけれど、痛くないからそのままにしてもいい?」
上記のように思う方もいらっしゃいますが、放置すると炎症が進むおそれがあります。
この記事では、白いできものの原因の見分け方から適切な治療法まで、ムクノキ歯科の歯科衛生士である東山が詳しく解説します。
歯茎の白いできものが痛くないのはなぜ?

歯茎の白いできもので痛みが弱い、または痛くないものを「フィステル」と呼びます。
白いできものの多くは、歯の根の先にたまった膿が原因で、歯茎の表面へ現れやすいです。
歯の神経の働きが失われると、炎症が起きていても痛みの信号が脳に伝わらず、歯の根の先に膿がたまっても痛みがない状態になりやすいのです。
一方、神経がまだ生きている歯では、同じような感染でも強い痛みを伴う傾向にあります。
歯茎の白いできものの主な原因4つ

歯茎の白いできものの原因には、以下の4つが考えられます。
②歯根破折(歯のひびや割れ)
③歯周病
④その他の口内の症状
上記のどれに当てはまるかの特定が重要です。
①根尖性歯周炎(歯の根の先の炎症)や再感染による炎症
虫歯の進行や外傷、過去の根管治療(歯の神経の治療)後の再感染で根の先に炎症が生じ、膿がたまります。
炎症が慢性化すると、膿が通る細い道が形成され、歯茎の表面に白い「出口」となるフィステルができるのです。
フィステルが現れた場合は、感染源の清掃や消毒、封鎖による原因の除去が行われます。
歯の根の詳しい治療法については、以下の記事で解説しています。
☞【院長監修】根っこの治療は何をやっている?根管治療の必要性と内容は?
②歯根破折(歯のひびや割れ)
神経を失った歯はもろくなり、噛む力や歯ぎしりなどの負担でヒビが入るリスクがあります。
歯の割れ目から細菌が侵入すると周囲に炎症が広がり、後にフィステルが生じます。
破折の範囲によっては保存が難しく、抜歯を含む判断となる可能性があるため注意が必要です。
③歯周病
歯周病は、歯と歯茎の間の歯周ポケットに細菌がたまり炎症を起こす病気です。
歯周病が進行すると歯の周りに膿がたまり、その膿が歯茎の表面に出て白いできもののように見えるケースがあります。
歯周病が進行すると歯茎の腫れや出血、口臭、歯がぐらつくなどの症状を伴うことが多いです。
また痛みがある歯だけが原因とは限らず、炎症は広範囲に及ぶ可能性があります。
④その他の口内の症状
歯茎の白いできものに見えても、原因が歯の病気ではない場合もあります。
代表的なものを3つ紹介します。
口内炎
口内炎は表層粘膜の炎症で、しみる、触れると痛むケースが多く、通常は数日〜1週間で回復します。
白板症
白板症は口の粘膜が白く厚くなり、擦っても取れないのが特徴です。
長期間の刺激(入れ歯のこすれや喫煙など)が関係するとされ、一部は前がん病変に分類されます。
見た目では判断が難しいため、早めに歯医者に相談し、口腔外科のある病院で確認してもらいましょう。
カンジダ症
カンジダ症は、口の中でカビの一種であるカンジダ菌が増殖して起こります。
歯茎や舌に白い苔のような膜ができ、ヒリヒリする・違和感があると感じやすいです。
体調不良や免疫の低下、抗菌薬や吸入ステロイドの使用などで発症しやすい傾向があります。
薬による治療が可能なので、歯医者で相談してください。
歯茎の白いできものを潰すのは要注意!痛くなくても放置NGな理由

歯茎の白いできものを自分で潰しても、根本の原因は除去されないため治りません。
細菌が入り込み、炎症が広がるおそれがあります。
痛みがなくても進行することがあるため、放置せず歯医者で確認しましょう。
白いできものを潰すと感染リスクが高まる
白いできものを指や爪でできものを押すと、口の中の細菌が入り込み、炎症がさらに広がる危険性があります。
一時的に膿が出て小さくなっても、感染源である歯の根や内部の細菌は残ったままです。
結果的に再び膿がたまり、症状を繰り返す原因になります。
見た目が気になっても触ったり潰したりせず、歯磨きやうがいで清潔な状態を保ちましょう。
放置による再発や悪化の可能性がある
フィステルの原因となる炎症は、放っておくと歯を支えている骨にまで広がるおそれがあります。
進行すると治療期間が長引くだけでなく、歯を残せなくなるケースも少なくありません。
また上の奥歯では、副鼻腔(鼻の奥の空洞)に炎症が及び、鼻づまりや頬の痛みにつながる可能性もあります。
一方、下の奥歯では、あごの中を通る神経の近くまで炎症が進行し、まれにしびれを感じることもあるでしょう。
痛みがなくても進行している場合があるため、自己判断せずに早めの診断と治療を受けることが大切です。
歯が原因による副鼻腔炎については、以下の記事で詳しく解説しています。
☞歯が原因の副鼻腔炎(歯性上顎洞炎)とは?症状や原因と歯科治療法を徹底解説
歯茎の白いできものがあるときの受診のサインと治療の流れ

歯茎にできものがある場合は、原因の歯を特定して、感染を取り除く治療を行うのが基本です。
受診の目安と治療の流れを把握しておきましょう。
受診が必要なサイン
次のような症状があるときは、早めの受診が推奨されます。
② 押すと膿(うみ)が出る、変な味がする
③ 噛むと痛い、歯が浮くような感覚がある
④ 2週間以上形が変わらない、または少しずつ大きくなっている
⑤ 硬く盛り上がっている、しこりのように感じる、出血や口臭がある
⑥ 熱が出る、顔が腫れる、飲み込みにくいなど全身に影響が出ている
上記の症状は、炎症や感染が進んでいるサインです。
特に④〜⑥に当てはまる場合は、できるだけ早く歯医者を受診しましょう。
検査の流れと原因の見つけ方
初めて歯医者を受診する場合、まず問診で症状の経過を詳しく聞き取ります。
- いつから白いできものがあるか、痛みや腫れの有無、過去に治療した歯かどうかなどを確認
- 歯に冷たい刺激を当てて神経が生きているかの確認(冷温診)
- 軽くたたいて痛みが出るかの確認(打診)
- レントゲン(デンタルX線やパノラマX線)で歯と骨の状態を確認
主な治療法と通院回数の目安
歯茎の白いできものに対する治療は、症状や歯の状態によって内容が異なります。
ここでは、代表的な治療法とその流れを紹介します。
根管治療・再根管治療
歯の内部の感染した部分を取り除き、洗浄・消毒して薬を詰める治療です。
1本の歯でも数回に分けて行うことが多く、痛みはほとんどありません。
歯根端切除術
根の先に膿の袋(嚢胞:のうほう)ができている場合や、歯の上側(歯冠側)からのアプローチが難しいときに行う外科的処置です。
歯茎を小さく切開して根の先を切除し、膿を取り除いたうえで詰め物をします。
意図的再植
骨の形や位置の関係で根の先の手術ができない場合に、一度歯を抜き、根の処置をしてから元の位置に戻す方法です。
条件が合えば、歯を残せる可能性が高まります。
歯根破折がある場合
歯の根が大きく割れていると、残念ながら保存が難しいことが多いです。
その場合は抜歯を検討し、ブリッジやインプラントなどで機能回復を図ります。
治療回数や期間は、感染の範囲や根の形、体調によって異なります。
子どもや妊娠中に歯茎に白いできものが現れたときの治療法

子どもや妊娠中に歯茎に白いできものが現れたときの治療について解説します。
子どもの乳歯に白いできものができた場合
乳歯でも歯の神経の機能を失い、歯茎に白いできものができる場合があります。
放置すると下から生えてくる永久歯に影響する場合もあるため、歯科での早めの相談が望ましいです。
妊娠中に白いできものができた場合
妊娠中はホルモンの影響で歯茎が腫れやすく、炎症が悪化しやすい時期です。
強い痛みや腫れがある場合は、体に負担の少ない応急処置も可能なので、早めに歯医者に相談してください。
緊急性が低い場合は、体調が安定する中期(妊娠16〜27週)に治療を行うことが多いです。
妊娠中の歯科治療については、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
☞妊娠中に歯が痛いときの4つの原因と対処法|初期から臨月までの受診ポイントを解説
まとめ:歯茎の白いできものが痛くなくても早めの受診を

歯茎にできた白いできものは、自然に治ることはほとんどなく、潰したり放置したりすると症状が悪化するリスクがあります。
白いできものが治っても同じ場所に繰り返し出る場合は、歯の根や周囲の骨に原因がある傾向が高いです。
また、疲労やストレス、睡眠不足などで免疫力が下がると、口内の炎症が悪化しやすくなります。
普段から歯磨きやうがいで口の中を清潔に保ち、定期的に歯のチェックを受けておくことが大切です。
痛みがなくても「おかしいな」と思った時点で早めに相談することで、歯を守れる確率が高まります。
ムクノキ歯科では、公式LINEやメールでのお問い合わせを24時間受け付けております。

