
「電動歯ブラシは使いやすいけど、本当にデメリットはないの?」
「購入してから後悔したらどうしよう…」
上記のような疑問を持って、電動歯ブラシの購入を迷っている方は多いのではないでしょうか。
電動歯ブラシは使い方を誤ると歯茎が下がる、磨き残しが増える、継続コストがかかるなどのデメリットがあります。
さらに重要な点として、電動歯ブラシはあくまで補助的な存在であり、歯医者での定期的なクリーニングを代替することはできません。
この記事では、歯科衛生士の視点から電動歯ブラシの7つのデメリット、向かない人の特徴、正しい使い方を詳しく解説します。
購入検討中の方も既に使用している方も、電動歯ブラシの正しい使い方を理解した上で参考にしてください。
電動歯ブラシのデメリット【仕上がり編】

電動歯ブラシは自動で高速に動くため、手磨き以上に注意が必要です。
ここでは、電動歯ブラシを使う際の仕上がりに関するデメリットについて解説します。
力加減が掴みにくく磨き残しが増加傾向に
電動歯ブラシのデメリットとして最大の特徴は、自動で動くため自分で磨く力加減を調整しにくい点です。
手磨きであれば、歯の状態に応じて圧力を自由にコントロールできます。
しかし電動歯ブラシは既に一定の振動数が決まっているため、自分がどの程度の力で当てればよいか判断しづらいのです。
特に使い始めの頃は、適切な当て方が分からず、磨き残しが増えてしまう傾向にあります。
逆に弱すぎたりを入れすぎたり、逆に弱すぎたりと、バランスを保つのが難しいでしょう。
ブラシの先が届かない部位が出やすい
歯並びや噛み合わせは個人差が大きいため、電動歯ブラシのブラシが届かない部位が出やすくなります。
電動歯ブラシのブラシヘッドは一定のサイズに設計されているため、複雑な歯並びや奥歯の奥側などに先端が十分に接触しないことがあります。
手磨きであれば細かく角度を調整できますが、電動歯ブラシでは柔軟な角度変更が難しく、知らずのうちに磨き残しが増えるのです。
叢生(歯が重なり合っている状態)や反対咬合(受け口)がある方は、特に注意が必要です。
歯周病や知覚過敏がある人には刺激が強い
電動歯ブラシは、既に歯周病や知覚過敏の人にとって振動刺激が強すぎるリスクがあります。
健康な状態であれば問題ない振動でも、歯や歯茎が既に弱っている場合には、さらなる傷みや不快感を引き起こすおそれがあります。
電動歯ブラシの振動数は通常毎分5,000~40,000回に達し、これが弱った歯茎に負担をかけてしまうのです。
口腔トラブルがある方が電動歯ブラシを使用する際には、事前に歯科医に相談しましょう。
電動歯ブラシのデメリット【本体・コスト編】

電動歯ブラシの使用には仕上がりだけでなく、本体そのものに関する経済的・機能的なデメリットもあります。
ここで一つずつ解説します。
本体価格が高く継続的なランニングコストがかかる
電動歯ブラシは一般的な手磨き歯ブラシと比べて、初期投資と継続コストの両方が高い点がデメリットです。
本体価格はメーカーによって異なりますが、5,000円~30,000円が相場です。一方で手磨き歯ブラシは数百円で購入できます。
さらに経済面で課題となるのは、替えブラシのランニングコストです。以下の表で比較してみましょう。
| 項目 | 手磨き歯ブラシ | 電動歯ブラシ |
|---|---|---|
| 本体価格 | 100~500円 | 5,000~30,000円 |
| 替えブラシ価格 | 100~500円 | 500~1,500円 |
| 替え時期 | 3ヶ月ごと | 3ヶ月ごと |
| 年間コスト | 約400~2,000円 | 約2,000~6,000円 +本体購入費(2~3年に一度) |
初年度だけで5,000~36,000円、2年目以降も2,000~6,000円の継続コストが発生するため、コスト面で割高感を感じる方も少なくありません。
内蔵バッテリーの寿命が短い(約2~3年)
電動歯ブラシは機械製品であるため、バッテリーの故障や劣化のリスクは避けられません。
手磨きと異なり、内蔵された電子部品やモーターが劣化する可能性があり、使用期間が長くなるほどリスクは高まります。
特にバッテリーは平均して2~3年で寿命を迎えるケースが多いです。
バッテリーが劣化した場合、交換が不可能な製品だと本体そのものを買い替える必要があります。
また内蔵の充電式リチウムイオン電池は通常のゴミに出せません。
メーカーの回収サービスや自治体の回収施設を利用する必要があり、手間がかかります。
音や振動に敏感な人には使いづらい
電動歯ブラシから発生する音や振動が苦手な方は、使いにくさを感じやすいです。
毎日使用するものだからこそ、不快に感じると継続がおっくうになりやすいでしょう。
また早朝や深夜の使用時、家族に配慮する必要がある環境の方にとって、音が気になる可能性があります。
特に神経過敏な方や音に敏感な方は、購入前に店舗で試用することをお勧めします。
電動歯ブラシの誤った使用による歯や歯茎への影響

電動歯ブラシを誤った方法で長期的に使い続けると、歯や歯茎に炎症が生じる可能性があります。
電動歯ブラシを以下のような使い方をしている方は注意が必要です。
- 力強く当てすぎている
- 同じ場所に長時間当てている
- 毎日3分以上使用している
歯茎が下がると、露出した歯根部が知覚過敏を引き起こしたり、見た目の変化を感じたりするようになります。
悪化すると、歯の根が虫歯になる根面むし歯のリスクも高まります。
電動歯ブラシが不要な人・向かない人の特徴

電動歯ブラシのデメリットを踏まえると、以下のような方には電動歯ブラシは向きません。
手磨きの歯ブラシで丁寧にブラッシングを続けるようにしましょう。
手磨きで十分に磨ける技術がある人
元々手磨きの技術が高く、磨き残しなくお口の健康を保てる方であれば、電動歯ブラシの必要性は低いです。
虫歯や歯周病の心配がなく、歯茎も健康な場合、手磨きで十分な効果が得られるため、無理に電動歯ブラシに変える必要はありません。
慣れた手磨きを続ける方が、継続率も高くなります。
コストを抑えたいと考えている人
毎月の家計を工夫したい、費用を最小限に抑えたいという方には、手磨きが向いています。
電動歯ブラシの本体代と替えブラシのランニングコストを考えると、手磨きの方が圧倒的に経済的です。
歯茎が弱い人や知覚過敏がある人
歯周病や知覚過敏の方は、電動歯ブラシの振動刺激で状態を悪化させるリスクがあります。
無理に電動歯ブラシに替える必要はなく、手磨きで優しく丁寧に磨く方法が適切です。歯科医の指導の下で、ブラッシング圧を抑えた手磨きを実践してください。
電動歯ブラシの効果を最大限に活かす正しい使い方

電動歯ブラシのデメリットを避け、最大限の効果を期待する正しい使い方を紹介します。
また1日の歯磨き回数の理想は、以下の記事で解説しています。
☞歯磨きは一日何回が理想?健康な歯を守る頻度を歯科衛生士が解説
歯と歯茎の境目を意識して1本ずつゆっくり当てる
電動歯ブラシを効果的に使うには、まず歯と歯茎の境目(歯肉溝)を意識して1本ずつゆっくり当てることが基本です。
ブラシを「動かす」のではなく「当てるだけ」という感覚で、軽く滑らせるように使用しましょう。
上記なら電動歯ブラシのメリットを最大限引き出せる方法です。
この方法であれば、歯茎への負担を最小限に抑えながら、効果的に汚れを落とせます。
力を抜きブラシを軽く滑らせる
電動歯ブラシを持つときは力を入れず、ブラシを軽く滑らせることが大切です。
強く押し当てすぎると、歯茎が傷んだり歯肉退縮が進んだりします。
手磨きとは異なり、電動歯ブラシは既に十分な振動があるため追加の力は不要です。
理想的なブラッシング圧は、毛先がわずかに曲がる程度と覚えてください。
1回の使用は2分程度を目安に毎日継続する
電動歯ブラシの使用時間は1回約2分を目安に、毎日継続することが効果を引き出すコツです。
短すぎても効果が減りますが、長すぎると歯茎に負担がかかります。
多くのメーカーの電動歯ブラシには2分でバイブル通知する機能が搭載されているため、これを目安にしましょう。
朝晩2回の使用が理想的ですが、無理のない範囲で継続することが最も重要です。
電動歯ブラシ選びで後悔しない5つのポイント

電動歯ブラシのデメリットを踏まえた上で、自分に合った製品を選ぶための5つのポイントを解説します。
①回転式や音波式などタイプ別の特徴を理解する
電動歯ブラシには大きく分けて3つのタイプがあります。
ただし、どのタイプを選んでも、定期的な歯医者でのプロケアが基本であることを忘れないでください。
| 回転式電動歯ブラシ | 音波式電動歯ブラシ | 超音波式電動歯ブラシ | |
|---|---|---|---|
| 特徴 | ブラシが回転して磨く | 高速振動で磨く | 毎分100万回以上の超高速振動 |
| 振動数 | 毎分5,000~10,000回 | 毎分16,000~40,000回 | 毎分100万~160万回 |
| 向いている人 | 健康なお口の人・汚れを落としたい人 | 磨き残しが多い人・手磨きから移行したい人 | 歯周病予防に力を入れたい人 |
| 注意点 | 振動が強いため歯茎が弱い人には不向き | 価格が高い傾向 | 最も高額 |
自分の歯の状態や磨く習慣に合わせて選ぶことが成功の鍵になります。
②歯科衛生士や歯科医師に相談する
お口のトラブルがある方や、どのモデルを選んでよいか分からない方は、購入前に歯科衛生士や歯科医に相談することを強くお勧めします。
プロの視点からのアドバイスは、後悔のない購入に繋がりやすいです。また実際に店舗で試す際、使い方のコツを学ぶことも重要です。
③替えブラシの価格と入手先を事前に確認する
電動歯ブラシの本体を購入する前に、替えブラシの価格と入手性を必ず確認してください。
ランニングコストが高すぎると、継続使用が難しくなります。例えば、Amazonや楽天での販売状況、公式サイトでの在庫確認などを事前にチェックしましょう。
また一度購入した電動歯ブラシなら、その替えブラシを使い続けることになるため、入手しやすいモデルを選べば長期的なコスト削減につながります。
④防水機能と保証期間を確認する
電動歯ブラシは毎日水に触れるため、防水機能は必須です。
最低でもIPX7等級(30分間の浸漬に耐える)の防水性能があるモデルを選びましょう。
また保証期間が2年以上あるモデルなら、バッテリー劣化時の対応もスムーズです。
⑤生活に合わせて選ぶ
電動歯ブラシの持ち運びやすさや、音・振動が気になる方は、生活に合わせて選びましょう。
購入前に必ず店舗で試用して静音性を確認してください。
特に早朝や深夜の使用を予定している方、家族と同居している方にとって、音の大きさは継続使用に大きく影響します。
一般的に音波式よりも回転式の方が静かな傾向にあります。
まとめ:電動歯ブラシのデメリットを理解して適切に使いましょう

電動歯ブラシのデメリットを理解した上で、自分に合った方法を選ぶことが後悔しない選択につながります。
ただし、最も重要なのは、3~6ヶ月ごとの定期検診で歯医者でプロによるクリーニングを受けることです。
電動歯ブラシはセルフケアの補助ツールに過ぎず、歯医者でのクリーニングを代替することはできません。
歯科衛生士による「PMTC」は、以下の記事でも参考にしているため、合わせて読んでみてください。
☞PMTCについて歯科衛生士が徹底解説丨 PMTCの効果や施術の流れを解説
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