「虫歯の平均って何本?」
「自分の虫歯は、多いの?」
このように過去に虫歯と診断を受けた経験のある人の中には、自分の虫歯が平均と比べて多いのか気になる方もいるでしょう。
現代の日本では、子どもの虫歯は大きく改善されている一方で、成人や高齢者の虫歯は依然として多い状態です。
最新の厚生労働省の調査や年齢別のリスクをもとに、今やるべき予防法をムクノキ歯科の歯科衛生士である東山が解説します。
統計でみる虫歯には「治療済み」も含まれる
厚生労働省の虫歯に関する統計では、「DMFT指数(う蝕経験歯数)」という指標が使われます。
「DMFT指数」は、以下の頭文字を取ったものです。
- D(Decayed):未処置の虫歯
- M(Missing):虫歯で失われた歯
- F(Filled):虫歯治療で詰め物・被せ物がされている歯
- T(Total):D・M・Fの合計
上記のように虫歯の統計には、治療していない歯と治療済みの歯の両方が含まれるのです。
年齢別の虫歯の平均本数は?
ここでは厚生労働省『令和4年 歯科疾患実態調査』の結果から、年齢別にそれぞれの平均本数を解説します。
12歳児は平均0.3本
12歳児の永久歯における虫歯経験本数は、平均0.3本です。
世界的に見ても非常に低い水準で、良い数値と言えます。
12歳は永久歯がほぼ生え揃う時期であり、この時点での虫歯の有無は、その後のお口の健康の基準となります。
15~24歳の虫歯は約2~3本
15~24歳の虫歯経験本数は、約2~3本です。
子どもから中高生、そして成人へと成長する過程で、虫歯が発生しやすくなる傾向があります。
この年代の虫歯増加の主な要因は、生活環境の変化が考えられるでしょう。
親の管理から離れることで、自分の好きな食べ物を自由に購入したり、好きなタイミングで間食を摂ったりするようになります。
また中学・高校生活では、部活動や受験勉強により生活リズムが不規則になりがちです。
忙しさから歯科検診の機会が減少する傾向にあり、虫歯の早期発見が困難になることも影響しています。
25〜34歳は約5〜6本
25〜34歳の虫歯の平均本数は、約5〜6本と急激に増加しています。
親元を離れ一人暮らしや不規則な食生活、就職によるストレスなどの生活環境の大きな変化が背景と言えるでしょう。
特に一人暮らしを始めると、歯科受診回数の減少や間食の増加、夜更かしでお口のケアをサボるなどが重なります。
また、体調不良や仕事のストレスなどにより免疫力が低下すると、お口の中の細菌が増えやすくなることも要因の一つです。
35〜44歳の虫歯は治療済みも含めると9.7本
35〜44歳では、虫歯になった歯は平均9.7本です。
過去に治療した歯が再び虫歯になっているケースが多く、再治療が必要な歯が見つかる傾向にあります。
この年代は仕事や家事、子育てに忙しく、自分の健康管理が後回しになりがちです。
また、ストレス性の歯ぎしりや食いしばりにより、歯に負担がかかることも多く、虫歯以外の問題も併発しやすくなります。
治療と予防の両方が重要な期間と言えるでしょう。
45〜64歳では平均13.4〜15.8本
45〜64歳になると虫歯経験本数は、平均13.4〜15.8本と総数の半分程になります。
この時期は、過去の治療痕の再治療に加えて、歯周病の影響が大きく現れる傾向にあります。
歯周病の進行で歯茎が下がると、歯の根元が露出し、「根面う蝕(根元の虫歯)」のリスクが高まるのです。
また歯を失ってしまい、ブリッジや部分入れ歯などの抜けた部分を補う治療を受ける人も増え始めるでしょう。
定期的なメンテナンスの重要性が高まる年代です。
65〜74歳で虫歯平均18.4本
65〜74歳では虫歯経験本数が平均18.4本となり、ほとんどの歯が処置を受けている状態です。
この時期は根面う蝕がさらに増加し、歯周病をはじめとする複数の問題が同時に発生します。
唾液分泌量の減少でお口の中を自然にきれいにする働きが低下し、細菌が繁殖しやすい環境になりやすいです。
また、全身疾患の治療薬による副作用でもお口の乾きが生じることもあり、虫歯や歯周病のリスクがさらに高まります。
この年代こそ、専門的な口腔ケアと定期的な歯科受診が不可欠です。
75歳以上は22.1本
75歳以上になると虫歯経験本数は22.1本に達し、ほぼ全ての歯が影響を受けている状態です。
75歳以上になると歯の保存よりも、しっかり噛むことや快適な生活の維持に重点が置かれるようになります。
現代の虫歯平均本数は減っている?
ここでは、虫歯の発生状況について解説します。
過去30年で12歳児の虫歯は3.6本から0.3本へ
1993年の12歳児の虫歯の平均本数は3.6本でしたが、2022年には0.3本まで減少しました。
子どもの虫歯改善の背景として、フッ素洗口の普及や定期健診の定着、親の予防意識の向上が関係しています。
またテレビやインターネットを通じた口腔ケア情報の普及により、家庭での予防意識が大幅に向上しました。
学校における健康診断で、虫歯の早期発見の体制が整備されたことも考えられます。
大人の虫歯平均は本数が多い傾向
大人の虫歯は過去の治療数も影響し、現在でも高い虫歯経験本数を示しています。
現在の成人や高齢者世代は、子ども時代に現在のような充実した予防体制がありませんでした。
今後は、大人の虫歯数値も減少していくと考えられます。
30~40代以降は虫歯と歯周病のダブルリスクに備える
歯の疾患として頭に浮かぶのは虫歯ですが、30~40代の方は歯周病についても理解が必要です。
ここでは、歯周病の進行による影響を解説します。
歯周病について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
☞【知らないと恐ろしい】歯周病について|歯周病ってどんな病気?症状と歯周病の治療方法について
加齢とともに歯茎が下がり「根面う蝕」が増加
大人になると加齢により歯ぐきが下がることで歯の根元が露出し、虫歯のリスクが高まります。
歯の根元は出ている部分と比較してエナメル質がないため酸に弱く、虫歯になりやすいのが特徴です。
歯茎が下がる原因の歯周病は、進行具合に個人差がありますが、早い方で30代から現れはじめるでしょう。
虫歯と歯周病の併発で歯を失うリスクが加速
虫歯と歯周病が同時に進行すると、歯を失うリスクが加速します。
歯周病により歯を支える骨が減少し、同時に根面う蝕になると、歯の保存が困難になるケースが増加するのです。
【世代別】虫歯を防ぐためにできる予防法
虫歯を予防するためには、年齢に応じた対策が必要です。
ここでは、子ども・成人・高齢者に分けて予防法を解説します。
【子ども向け】仕上げ磨き・フッ素・間食コントロール
子どもの虫歯予防には、親による仕上げ磨きが最も重要です。
小学校を卒業する12歳頃まで継続し、磨きにくい奥歯の噛み合わせの部分や歯と歯の間を重点的に清掃しましょう。
お子様が磨けていない場所を知るために、自宅でも歯垢の検知液を活用するのがおすすめです。
フッ素配合歯磨き粉の使用、定期的なフッ素塗布も効果的でしょう。
また間食は時間を決めて摂取し、「だらだら食べ」を避けることが重要です。
特に糖分を含む飲み物の常時摂取は避け、水やお茶を中心とした水分補給を心がけてください。
【成人向け】歯間ケアとストレスや生活習慣の見直し
成人では、歯ブラシだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスを使用した歯間ケアが不可欠です。
歯と歯の間は虫歯や歯周病が最も発生しやすい部位であり、適切なブラッシングやメンテナンスでリスクを減らすことができます。
また、ストレス管理と規則正しい生活習慣も重要です。
十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動により免疫力を維持し、お口の健康を保ちましょう。
【高齢者向け】お口の乾き・義歯の管理・定期ケアの継続
高齢者は、お口の乾きの対策が特に重要です。
こまめな水分補給、唾液を出すマッサージ、保湿剤の使用によりお口の潤いを保ちましょう。
義歯を使用している場合は、適切な清掃と定期的に歯医者での調整が必要です。
定期的に歯科を受診すれば、残っている歯の機能維持にも役立ちます。
また全身の健康状態との関連も考えられるので、かかりつけ医との連携も重要です。
まとめ
子どもの虫歯は減少している一方で、成人と高齢者はまだまだ多い状態です。
虫歯の治療歴は変えられませんが、これ以上増やさないことは可能です。
年齢や生活スタイルに合ったケアを継続し、定期的な歯科受診で健康な歯を維持していきましょう。
今日から始める適切なお口のケアが、将来の歯の健康を守ります。
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