
「フッ素は体に悪い」という声をSNSで目にした経験から不安を感じる方も多くいらっしゃるでしょう。
小さなお子様を持つ親御様にとっては「虫歯予防は大切、でも体に悪いものは避けたい」という思いがある方も多いはずです。
当院ではフッ素は正しく使えば体に悪くなく、むしろ虫歯予防に欠かせない存在と考えています。
この記事では、フッ素に対する考え方を整理して不安を解消し、年齢別の使用目安や海外での実情、歯医者の高濃度フッ素塗布について歯科衛生士である東山が詳しく解説します。

フッ素が体に悪いと言われる理由4選

フッ素が「体に悪い」と言われる理由には、誤解も含まれています。
フッ素は過剰に摂取した場合に中毒を起こす可能性がありますが、日常的な歯磨き粉や歯医者での塗布では危険性は低いです。
ここではフッ素が「体に悪い」と言われる理由について4つ解説します。
①フッ素とフッ化物は違うもの
「フッ素」と「フッ化物」には違いがあり、フッ素は自然界に存在する元素で、単体は毒性を持ちます。
歯医者で使う「フッ素」というのは、いわゆる「フッ化物」という化合物で性質は全く異なるものです。
実は緑茶や海産物などにも含まれており、日常的に口にしています。
歯医者で扱うフッ化物は毒性の高いフッ素単体とは別物で、正しく使えば不安を解消できるでしょう。
②過剰摂取による急性中毒と慢性中毒
フッ素は摂取する「量」が大事です。
体重1kgあたり2〜5mgを一度に飲み込むと急性中毒の可能性があるとされています。
たとえば体重15kgの子どもなら20〜30mgが目安ですが、1000ppmのフッ素配合歯磨き粉であれば20〜30g以上を一気に食べてしまわない限りこの量には達しません。
通常の歯磨き中の使用量で、中毒が起こることはないのです。
一方で、長期間にわたり高濃度をとり続けると「慢性中毒」と呼ばれる状態になる可能性があります。
代表的なのが「歯のフッ素症」で、永久歯が作られる時期(おおよそ0〜8歳)に過剰にフッ素を取り込んだ場合に見られるものです。
ただし、日本での普段の生活で心配する必要はほとんどありません。
③発がん性やIQ低下などの噂
「フッ素は発がん性がある」「IQを下げる」といった噂もあります。
しかし大規模調査では、虫歯予防で使うフッ素と発がんリスクの関連は認められていません。
IQに関しても、問題になった研究は自然に高濃度フッ素を含む地下水の地域での調査で、日本の環境とは大きく異なります。
普段の歯磨き粉や歯医者での塗布を適切に行えば心配はいりません。
④海外ではフッ素の使用規制がある
「ヨーロッパではフッ素が禁止されている」と耳にする機会がありますが実際は少し違い、健康被害の心配ではなく、水の成分や文化的な背景、費用などの理由によるものです。
ドイツやスウェーデンなど一部の国では、水道水にフッ素を混ぜる取り組みをしていません。
ただし、歯磨き粉にフッ素を配合することは広く行われており、虫歯予防の効果も認められています。
アメリカでは「水道水に少しだけフッ素を加えると地域全体の虫歯が減る」という効果が証明されており、公的機関も使用を推奨しています。
WHOも「一定の濃度以下であれば安全で、むしろ虫歯予防に役立つ」と明言しています。
世界的に見ても「フッ素は危険だから禁止されている」のではなく、「適切な量を守って使えば有効」という立場が主流なのです。
参照:厚生労働省 『「フッ化物洗口の推進に関する基本的な考え方」について』

フッ素が虫歯予防に効果的な3つの作用

フッ素は本来、虫歯を防ぐためにとても頼もしい存在です。
実際にどのような働きがあるのか、ここで代表的な3つの作用を解説します。
①再石灰化を促進する作用
食事で虫歯菌が酸を作り、歯の表面からカルシウムが溶け出すのを「脱灰(だっかい)」といいます。
唾液には失われた成分を戻す「再石灰化」の働きがあるのです。
フッ素は再石灰化にサポートして初期の虫歯を修復します。
②歯質を強化して酸で溶けにくくする作用
フッ素が歯に取り込まれると、エナメル質の中に「フルオロアパタイト」という酸に強い結晶がつくられます。
もとのエナメル質よりも溶けにくい性質を持っているため、歯が酸にさらされても傷みにくくなるのです。
③虫歯菌の活動を抑制する作用
フッ素には虫歯菌の働きを抑える作用もあります。
フッ素を塗布すると虫歯菌が酸を作る力を弱め、歯が溶けにくくなることに期待できます。
フッ素を塗る際の年齢別使用方法

フッ素は、年齢に応じた量と濃度を守れば子どもから大人まで使用可能です。
2023年には国内の学会が推奨を改訂し、年齢ごとの使い方がより明確になりました。
ここでは、最新の目安を3つに分けて紹介します。
0〜2歳の使用量と濃度
0歳の歯が生え始める時期から使えますが、量は「米粒程度(1〜2mm)」とごく少量にとどめましょう。
推奨される濃度は1000ppmFで、以前より高く設定されています。
これは虫歯予防の効果を高めるためですが、飲み込んでしまう恐れもあるため、必ず保護者の方が歯磨き粉をつけて使用してください。
3〜5歳の使用量と濃度
3〜5歳の時期は、フッ素濃度は1000ppmFで「グリーンピース大(約5mm)」が目安です。
子ども自身でうがいができるようになる頃ですが、まだ飲み込んでしまう可能性もあります。
保護者が一緒に仕上げ磨きをしながら、量を守って使うことが大切です。
6歳以上と大人の使用量と濃度
6歳を過ぎると、永久歯が生えそろい始める大切な時期です。
歯ブラシ全体(1.5〜2cm程度)に歯磨き粉をのせ、濃度は1500ppmFが推奨されます。
大人も同じで、虫歯予防だけでなく知覚過敏や根面う蝕(歯茎が下がって露出した部分の虫歯)にも効果的です。
うがいは軽く1回にとどめると、フッ素が歯にとどまりやすくなります。
引用:日本歯科衛生士会 『フッ化物応用に関する国内外の動き』
大人がフッ素を使う2つのメリット

フッ素は子どもだけでなく、大人の歯を守るうえでも大きな役割を果たします。
ここでは大人がフッ素を使う2つのメリットを紹介します。
メリット1:大人の虫歯予防に対する効果
大人になると歯茎が下がるため、露出しやすい歯の根元(象牙質)部分に虫歯予防効果の期待ができます。
象牙質はエナメル質よりやわらかいため、酸に溶けやすく、虫歯のリスクが高まります。
フッ素は再石灰化を促し、歯質を酸に強くする働きがあるため、根面う蝕(歯の根元の虫歯)を防げるでしょう。
メリット2:歯の知覚過敏に対する効果
冷たいものや甘いものがしみる「知覚過敏」は、多くの大人が経験する症状です。
原因は歯茎の下がりや、歯の表面のエナメル質がすり減って象牙質が露出することにあります。
フッ素は象牙質表面に作用して細かい穴をふさぎ、刺激が神経に伝わりにくくなるため、知覚過敏の軽減に役立ちます。
毎日の歯磨きでフッ素を取り入れることや、歯医者での高濃度フッ素塗布によって症状が和らぐケースも少なくありません。
歯医者での高濃度フッ素の塗布について

「市販の歯磨き粉よりずっと高濃度のフッ素を歯医者で塗るのは体に悪いのでは?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。
歯科医院で行うフッ素塗布は専門的な管理のもとで行われており危険性は低いです。
ここでは、フッ素塗布の仕組みと歯医者で受けるメリットについて解説します。
フッ素塗布の仕組みと濃度
歯医者で使うフッ化物ジェルは約9,000ppmと、市販歯磨き粉(上限1,500ppm)の6倍にあたる高濃度です。
歯の表面に直接作用させるためのもので、飲み込むことを前提としていません。
歯科医師や歯科衛生士が塗布し、余分なジェルは拭き取るため体内に入る量はごくわずかになります。
適切なプロセスを踏むことで、体へのリスクを避けつつ最大限の効果を得られるのです。
PMTC時に塗布するメリット
歯医者で定期的に受ける「PMTC」の仕上げにフッ素を塗布するのは、とても理にかなった方法です。
歯の表面がきれいに磨かれ、バイオフィルム(細菌の膜)が除去された状態でフッ素を塗布すると、成分の浸透効果が高まります。
さらに、自宅での歯磨きと医院での高濃度塗布を組み合わせることで、虫歯予防の効果が高まるとされています。
歯科衛生士が行う「PMTC」については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
☞PMTCについて歯科衛生士が徹底解説丨 PMTCの効果や施術の流れを解説
まとめ:フッ素は適切な使用量で歯を守りましょう

フッ素は、虫歯予防に欠かせない大切な成分です。
歯医者で使うのは毒性のあるフッ素単体ではなく、安定した「フッ化物」です。
過剰に摂取すれば中毒の危険はありますが、歯磨き粉や歯医者での塗布では現実的に起こりません。
WHOや厚労省も使用を推奨しており、年齢ごとの使用量を守れば子どもから大人まで使えます。
虫歯予防は日々の習慣が大切で、歯磨きや食生活に加えてフッ素を取り入れることで歯を守れます。
「体に悪い」ではなく「歯を守る味方」として前向きに使用を検討しましょう。
ムクノキ歯科では、公式LINEやメールでのお問い合わせを24時間受け付けております。

